舞台の効果音

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今回は、『パコと魔法の絵本』について。
映画『パコと魔法の絵本』は、なかなかの傑作だと思う。
いや、一種の迷作というか、怪作というか…、
とにかくもう幅広い階層にむけての素敵な作品になっている。
もともとの原作は舞台劇。
後藤ひろひと原作の
人気舞台「MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人」が
ベースになっているという。
舞台劇を映画化するにあたって、
「戯曲の面白さを崩さないようにしたが、
逆に舞台以上に芝居的に描いてやろうと決めました」
と中島監督はいろんなインタビューに答えている。
パコと魔法の絵本16
監督の思いはどうであれ、
原作の後藤ひろひとさんが考えたもともとの人物設定が、やっぱり芝居のキャラっぽい。
人の世の傷つきやすく弱い心の代表例として、それぞれが存在している。

・子供の結婚式にも呼ばれず、ジュディ・オングが大好きなオカマの木之元(國村隼)、
・大人の演技ができずに、昔の幻影に怯える元有名子役の室町(妻夫木聡)、
・自分に自信がなくて、どういうわけか消防車にひかれてしまった消防士の滝田(劇団ひとり)、
・いわくつきで、銃で撃たれて入院してきた傷だらけのヤクザの龍門寺(山内圭哉)、
・どこにでも出没してきて、どこかおかしい堀米(阿部サダヲ)
・メルヘンおたくで、ピーターパン気取りの医者の浅野(上川隆也)、
・恫喝口調はお手の物、タトゥー入りの凶悪な看護師のタマ子(土屋アンナ)、
・ドラキュラのように顔が怖く、将来の社長夫人を目指す強欲な看護師の雅美(小池栄子)、
・その雅美に、いつも噛まれている天然オトボケ亭主の浩一(加瀬亮)、
・そして、
 一代で自分の会社を必死に築いたかなりの偏屈ワガママジジイの大貫(役所広司)

という心に歪みや傷を抱いた人間たちが集まっている病院。
パコと魔法の絵本13
「今回は俳優の芝居を見せる映画にしたかった。
役所さんたち俳優には思い切り芝居をしてもらった。
脚本を超えるぐらいオーバーに」という監督の考えどおり、
その意を受けた役者たちの懸命さというか、
それこそオーバーアクションぎみな演技は一見の価値がある。
また、
「心に傷を持つ頑固で偏屈な老人が純真な少女の心に癒される」
というタイプの物語は古今東西いたるところに出現してきたわけだが、
これほどポップで色鮮やかな映像世界で表現した人はいないのではないだろうか。
パコと魔法の絵本
「これまで見たことのない新しい映像でなければ、作る意味がない」
というのも、これまた中島監督の言葉だが、
この点に関しては、CMディレクター時代からの持論であり、
ずっと実践し続けてきていることでもあるのだろうと思う。
たとえば、
暴走族の土屋アンナが、
不満げにゴスロリしているショットが妙に可笑しい『下妻物語』や
さらにパワーアップした超極彩色の『嫌われ松子の一生』と、
ここのところ、続けて作品を生み出してきている中島監督ではある。
そう言えば、
CMディレクター時代のヒット作もすでにそんな傾向が著しい。
特に、
あの「サッポロ黒ラベル」のCMシリーズは良かった。
ACCグランプリを受賞した「サッポロ黒ラベル~温泉卓球編」が登場した時は、
本当に驚かされた。
豊川悦司と山崎努が、
温泉卓球で大人げない戦いを繰り広げるというヤツだ。
浴衣の豊川悦司が、物凄い形相で打ち込むピンポン球のスローモーション。
卓球台のエッジに当たってバウンドしていくピンポン球を打ち返そうと、
さらにスリッパを吹っ飛ばしてジャンピングする同じく浴衣のおっさん山崎努…。
パコと魔法の絵本12
その後も、
焼き肉編、金魚すくい編、カラオケ編、
温泉卓球リベンジ編、雪合戦編…。
と、高度な技術に支えられた「大人げない戦い」のCMは出現した。

「大人の意地の張り合いの強烈なデフォルメ」と、
「商品であるサッポロ黒ラベルを飲みほす瞬間の爽やかさ」との鮮烈な対比。
お見事でした。
中島監督の本来の姿は、
ヒット作の多い売れっ子CMディレクターなんだと思う。
したがって、
「商品をどう印象づけるか?」というようなCMディレクター的な発想は、
現在の映画の仕事に対しても、その考え方の底辺にあるのではないかと思う。
パコと魔法の絵本2
『パコと魔法の絵本』を要約すると、
「他人に自分の事を考えられるだけで腹が立つと公言してはばからない、
誰にも全く心を開かない性悪で冷酷な老人の大貫が、
一日しか記憶を保てないパコという少女の心に残りたいと願い悪戦苦闘する物語」
もし、105分に渡るこの映画全体が中島監督によるCMだとするならば、
そして、そこに売り出されようとしている商品があるのならば…。

それは…、その商品とは、
自分の心を剥き出すことを常に恐れるあまりに、
抑圧してしまっている現代人の「純粋な感情」の部分なのではないかと思う。
パコと魔法の絵本5
パコ(アヤカ・ウィルソン)のきらきらした瞳や可愛い表情、
毎日、母が贈ってくれたという誕生日プレゼントの絵本を読む時の元気な声、
そういうピュアな感じの部分が、
実は、屈折し・汚れ・歪み・怯えてしまっている大人たちの心の奥にも
あるわけで…。
しかし、そんなことを声高に主張しても意味はないし、事足りない。
それに、かなり照れくさい。
大人は、複雑怪奇な心を持っているからこそ大人たり得るのであって…、
まして、「純粋な感情」をクローズアップし、売り出すとなると、
結局、絵本の「わがままガマ王子」を弱い大人なシンボリックな喩えとして、
デフォルメし、あざといまでのギャグを満載し、
現実離れしたビジュアルでカラフルに勝負するというパターンになったのだと思う。
ど派手なデフォルメと伝えたい何かとの組み合わせ、
思いっきり極論すると、
そういう発想の傾向は、「サッポロ黒ラベルのCM」と同じなのかもしれない。
パコと魔法の絵本3
エンディングロールの最後に、
再び、パコと大貫がベンチに座って仲良く絵本を読んでいるシーンがある。
それを観ると思わず胸にこみ上げてくるものがあるのではないかと思う。

ちなみに、中島監督が、役者の面々に指示したことのひとつに
「感情に嘘はつかないでください」というのがあるのだそうだ。
高度なデジタルによるCG技術とは別に、
役者全員によるアナログな演技の集積と、
それによって役者が表現しぬいた感情たちが、
あの架空の超極彩色の世界にあって、逆にリアルだったからこそ、
「誰の心にも届く童話」になりえているのではないかと思う。

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■大したことではないのですが…
いい映画だったなぁと思いつつ、
そして、上記のようなくだらないことをちまちま考えていたら、
ふと「なんであんなに可愛い女の子の名前がパコなんだろう?」って思ってしまいました。
そう思いません?
なんぼなんでも「パコ」はないでしょ。主役なのに…。
パコと魔法の絵本8
原作者の家族か恋人のあだ名かな?
あーでもない、こーでもないと考えるのも面倒なので、
原作者の後藤さんのブログを読んでみたら、
驚くべきことに「パコ」って、なんと犬の名前でした。

だから、
映画『パコと魔法の絵本』の中で
役所広司さん演じる意地悪じじい「大貫」が
主人公「パコ」と2度目に対面する時に
こんな事を言います。
「なんだ?
 なんか犬みたいな名前だったな?
 ・・・パコ?」
(※上の7行分は後藤さんのブロクの一部の抜粋です。)

※後藤さんによると、「パコ」は相当恐そうな犬だったらしく、
子供たちがそこの前を「駆け抜ける」ことが、度胸試しみたいになっているようでした。
でも、本当は優しい犬だったとか…。

パコと魔法の絵本4

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