舞台の効果音

演劇、ドラマ、映画、効果音、音効、サントラ、サウンドトラック、 プレゼン、劇、学校祭、音楽、BGM、SE、音、曲、学芸会、学園祭、発表会など ドラマについてや場面に応じた音楽などの話題を中心としたブログです。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




Gペンをカリカリいわせながら、黙々と机に向かって描き続けている男がいる。
巨大な何者かの圧力と孤独に対峙し続けているその背中。

そして、
剣の道を極めようとした野獣のような若者が、
馬鹿げた、けれども、壮絶な斬り合いの果てに見るものを
一緒に見つけたくて、
ひたすらこのペンを持つ男も戦っている。

額に滲む汗、
重く澱んだ体、
振り絞る気力。

もう夜明けだ。
鳥の声、
日差しの気配も感じる…。

仕上がった一枚のその絵。


-------------------------------------------------------------------
「この身体というテーマを描きたくてこの作品を選んだのか
 この作品だから身体というテーマへ導かれたのか
 明け方に一人で絵を描いているときふと思う
 まだまだではありながら腰の入った身体使いが描けたとき
 感謝の気持ちで満たされる
 楽しくてたまらなくなる」     by 井上雅彦
-------------------------------------------------------------------

吉川英治の原作『宮本武蔵』をベースにして、
1998年から週刊モーニングで連載されている『バガボンド』
作者は、
かつてスポーツマンガのジャンルにおいて一世風靡した『スラムダンク』で、
有名にもなった井上雄彦。
井上雅彦さんの画力は、もともと定評があったが、
さらに進化を遂げているようだ。

なにせ1枚1枚の絵に抜群の冴えがある。

宮本武蔵を主人公として、
戦国末期から江戸時代の転換期を舞台にその生きざまを描いた作品は、
それこそこれまでに、かなりの数で存在している。

映画あり、ドラマあり、小説あり、マンガあり、
柴田錬三郎の小説『決闘者宮本武蔵』などや
萬屋錦之介のむやみに長い、年末大河ドラマ『宮本武蔵』なんてなものもある。
それは、
宮本武蔵という対象に向かって、
ただ剣において勝つことのみにその生涯を費やした兵法者という存在に対して、
それぞれの作者や制作スタッフらが、
独自の視点から挑み、描こうとしてきた挑戦の跡なのかもしれない。


ただその中にあっても、
井上さんの作品は、
それらの作品とは一線を画している感じがする。
その表現として特筆すべきものは、
一種の「身体論」的な感覚である。
それが、他の追随を許さないものになっている。

表現された一コマ一コマの絵の中から、息づかいが聞こえてくるようだ。

「バガボンド(vagabond)」とは、英語で「放浪者」を意味している。

まさに、あてどない孤高の道をゆく存在に対して、
もってこいのネーミングではある。
表現者としての井上雅彦は、素材に使っている「武蔵」よりも、
その道の中で漂白してきているように思う。

1枚の絵を完成させるのにどれほどの
気力と体力が要求されるものか。
放浪の果てにつかんだ表現がそこにある。

特に、今回の最新作『バガボンド』の27巻は傑作なのではないかと思う。
吉岡一門約70名に対して、
殺し合いの螺旋をのぼりつめていく武蔵

斬る、
かわす、
突き立てる、

時折、剣聖だった上泉伊勢守秀綱や柳生石舟斎の亡霊が
意味ありげなおちゃめな会話をしているのもいい。
めざす境地は見上げた空のずーっと向こう側にある。

やはり大人の鑑賞にたえられるものになっている。

さて、
そんな剣聖たちの亡霊を考えていると、
甲野 善紀という有名な古武術の求道者を思い出してしまう。

今、この現代に生きている時代おくれの武芸者…。

「人間にとっての自然とはなにか」

を追求し続けた果てに古武術に出会い、

「うねらない、ためない、ひねらない」という身体論を確立。

特にそれは、スポーツ運動論にも影響を与える
「固定的な支点に依らない動作」、
いわゆる「ナンバ」の動きの理論を広めた。

野球の桑田真澄や、
陸上の末續慎吾にも、
さらには、バスケットボール関係者にも、
プレースタイルを大きく変貌させ、新しい境地をつかむきっかけを生んでいる。

安定している重心を
わざと不安定にする事によってできる身体の動きに注目し、
「不安定な状態は、最も安定し身軽な状態である…」
と語っている。

あぁ、
ここにもひとり「バガボンド」がいる。

どちらにしても、
一つのことを追い詰め極めて行く中で、
たどり着いたその「境地」がもっている凄みを
このふたりは感じさせてくれるのだ。

ちょうど今(2007/12/03)、北京五輪を目指して戦う男たちがいる。
韓国戦で辛くも、勝利し、
この台湾戦で、五輪への出場切符を自らの手でもぎ取ろうする男たち。
「野球」という名の武術で己を磨いてきた者たちの斬り合い。
戦う者たちは、常に「バガボンド」なのかもしれない。



スポンサーサイト
コメント
コメントする
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
この記事のトラックバックURL
http://butainoneiro.blog117.fc2.com/tb.php/50-1cec356a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。