
人が『本物』の何かを表現しようとする時、
どれぐらいの数の人間が、
どれだけの集中力とエネルギーをその表現に注げば実現するのだろう?
さて、
それこそどういうわけか、ひょんなことから映画『Happy Feet』を観てしまった。
これがいいんですよ、なかなか。
南極を舞台に、歌って踊れる皇帝ペンギンたちの世界を描いた冒険CGアニメ。
(2006年に公開されたものが、現在はDVDとなって観ることができます)
どうせ子ども向けのありがちなCG物とあなどっていたら、
実に面白いわけで…。
画面から、
作り手のなんというか、溢れんばかりの「気魄」と「遊び心」といったものが
むやみやたらと感じさせられるものとなっていた。
確かにCGなんだけど、伝わってくるものが「本物」だった。
踊るペンギン!?という設定なんですが、
久々に見るタップダンスはとっても素敵でした。
それにしても最近のモーションキャプチャの能力は果てしないなぁ…。
いったい誰がこの作品を作ったのだろう?と調べてみたら、
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監督・脚本・製作:ジョージ・ミラー 脚本:ジョン・コリー
監督・脚本:ジュディー・モリス / ウォーレン・コールマン
製作:ダグ・ミッチェル / ビル・ミラー 音楽:ジョン・パウエル
美術:マーク・セクストン キャスト
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監督がジョージ・ミラーだったのでびっくり!
あの『マッドマックス(Mad Max)』の監督だった。
『マッドマックス』がこの世に出たのは1979年。
スピード感のあるアクションやバイオレンス・シーンによる世界観が
話題を呼んでヒットしたんですよね。
作りは荒っぽいけれども、鮮烈な若さがそこにはありました。
ただ、見終わったあとに荒んだ気分が残ってしまうものだった。
そういえば、『北斗の拳』なんかの最初の場面、
荒廃した大地をバイクが疾走するシーンなんかにも真似されていますよね。
それでも、とりあえず監督のジョージ・ミラーと今や名優と言われるメル・ギブソンが
初めて世間に認めらるきっかけにもなった作品だった。
あれから約30年。
ジョージ・ミラーも63才。
考えてみれば『ベイブ』も、彼の作品です。
ちょっとまるくなったのかなぁ。
監督自身が長い年月の中で、人間的な「智恵」を身につけてきているような…、
そのせいか愛らしい作風の映画が増えてきているような感じもします。

■とりあえず『Happy Feet』のあらすじ
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凍てつく大地、
すべて氷に覆われ尽くした南極大陸の冬。
皇帝ペンギンの国では、
厳しい冬の季節の中、
オスたちは卵を守り、
メスたちは魚を捕りに海へ遠出する。
春、
エンペラー帝国で卵が一斉に孵り始める季節になった。
たくさんの卵たちが次々に孵る中、
やっと最後にもごもご(英語でマンブルとはモゴモゴ)と、
くちばしからではなく、
なんと足から生まれてきたのがマンブル(イライジャ・ウッド)だ。
パタパタと足を動かす息子のクセを、
母親のノーマ・ジーン(ニコール・キッドマン)は
“マンブルらしい”と可愛く思い、その個性を認めていた。
父親のメンフィス(ヒュー・ジャックマン)は
“ペンギンらしくない”と不安に思い、何かしでかすのではないかと心配になった。
マンブルがペンギン小学校にあがると、
メンフィスの不安は的中。
彼らにとっていちばん大事な“心の歌”の授業中、
幼なじみのグロリア(ブリタニー・マーフィー)が
美声を披露する一方で、マンブルの致命的な歌声が発覚!
マンブルは、どうしようもない音痴だったのだ。
仲間たちは、そんなマンブルをバカにした。
メンフィスは、
何とかマンブルの音痴を直そうと試みるもののうまくいかなかった。
だって、マンブルは心を伝えようとすると、
歌よりも足が勝手に動き出してしまうのだ。
卒業式の夜、みんなからも疎まれて、
ひとりぼっちで踊っていたマンブルは、気がつけば流氷の上。
たどり着いた異国の地で出会ったのは、ラモン(ロビンウィリアムズ)を
リーダーとするアデリーペンギンの5人組アミーゴス。
彼らはマンブルのダンスを「すっげぇー、サイコー!」と超ほめまくる。
そして、世の中のすべてを知るというあやしい教祖サマ、
イワトビペンギンのラブレイス(ロビン・ウィリアムズ)にも
“お目通り”を果たし、
皇帝ペンギンとはまったく違うユニークな仲間たちを知るマンブル。
しかし、エンペラー帝国へ戻った彼を待っていたのは、
長老ノア(ヒューゴ・ウィービング)からの追放命令!
伝統をかき乱すマンブルの振る舞いが
ペンギン界に災いをもたらしていると言う。
最近の魚不足の原因もマンブルのせいにされてしまったのだ。
マンブルは、アミゴースやラブレイスとともに、魚を根こそぎ捕ってしまうエイリアンたちにかけあうために、さらに旅を続けるが…。
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と、あらすじを紹介しても、
そんなにこの作品の良さが伝わらないんですよね。
また、ストーリーに難ありと批判する評論家の方もいるが、
それほど文句を言われるようなものでもないと思う。
監督の映画にかける力の置き所を理解してあげるべきではないかと思う。
この『Happy Feet』は、
映像と歌とタップダンスに主力が置かれているわけで、
そういう意味で、声優陣もやたらと豪華な顔ぶれとなっている
ワーナーだから、やっぱりお金に糸目はつけない。
現在、妊娠中なのに『ライラの冒険』のPRのために来日したニコールキッドマンなども
声優として名を列ねている。
しかも、実に考えられた配置になっている。
■贅沢な声の出演者たち
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マンブル :イライジャ・ウッド/(幼児期): E・G・デイリー
グローリア :ブリタニー・マーフィ /(幼児期):アリッサ・シャファー
メンフィス :ヒュー・ジャックマン
ノーマ・ジーン : ニコール・キッドマン
ノア : ヒューゴ・ウィービング
ミス・バイオラ : マグダ・ズバンスキー
ミセス・アストラカン : ミリアム・マーゴリーズ
アミーゴスのメンバー
ラモン : ロビン・ウィリアムズ
ラウル :ロンバルト・ボヤー
ネスター : カルロス・アラズラキー
ロンバルト : ジョニーサンチェス三世
リナルド : ジェフ・ガルシア
ラブレイス : ロビン・ウィリアムズ(二役)
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『Happy Feet』の核心にあるのは、
音痴でペンギン仲間から疎外されている主人公マンブルのタップダンス。
心の歌を歌えないかわりに、心の中にある思いや感情がタップに表れる。
そんな主人公や他のペンギンたちのタップダンスが、見事だった。
モーションキャプチャ(関節部に加速度センサーを付けたダンサーに動作を行なってもらい、
その動作をデジタルデータに変換してコンピュータに取り込むこと)のおかげだと思うのだけれど、その動作のデータのもとになったのは誰かと思えば…。

それは、タップの天才セヴィアン・グローバーだった。
こんな超一級の人物が加速度センサーをつけて踊っていたとは。
セヴィアン・グローバーと言えば、
ドレッドヘアにオーバーサイズなTシャツ、
目にも止まらぬ驚愕スピードでの激しいリズムタップ。
そんな独特のスタイルで一躍タップ界のトップスターとなっている。
間接的には、北野監督の『座頭市』のタップシーンにも影響を与えた人でもある。

『Happy Feet』のメイキング映像がYoutubeにあって、
ゼヴィアン・グローバーがこんなふうにインタビューに答えていた。
「僕の足は一種の道具なんだ。
そして、
僕の足は言葉なんだ。ペンギンのマンブルと同じようにね」(私の自己流の訳)
そんなセヴィアン・グローバーがそれこそ「本気」になっているからこそ、
今回のような映像になったのだろう。
一見可愛らしいペンギンのダンスの本質には、
幼い頃から磨き上げられたゼヴィアンの高度な技術と努力の集積があったわけだ。

また、ペンギンたち全員による「群舞」も、CGをコピーして増加させているのではなく、
アナクロ的にタップダンサーたちを集めて「群舞」をさせている事実が凄い。
それだけ、人間が生み出す『本物』の表現に迫ってきているように思う。

さらに、『Happy Feet』のダンスの精度を高めているのは、
振付師のケリー・アビーの存在だった。
この優れた振付師があまたのペンギンの動画や本物の動きを観察して、
ペンギンらしい動きやダンスを探っていった。
ペンギンの動きに関する彼女の結論は、
「人がペンギンの歩き方を思い浮かべるとき、
両足のかかとを背中合わせにくっつけた姿を思うでしょ。
チャーリー・チャップリンの歩き方みたいな。
でも、現実にはほとんど平行に歩くの。
腰に芯になるポイントがないから、
ペンギンのすべての実際の動きは首から出てくるのよ」
ということなのだそうだ。
彼女は、ダンサー全員にペンギンの動作の指導をしまくったようで、
前述のゼヴィアンによると、
「彼女はもはや人間じゃないね。なんというか、そうペンギンそのものなんだよ」
そんな風にタップの天才からも言われているほどになっているのが面白い。
歌についても、とにかく資本がワーナーなので、
管轄のレーベルを好き放題に使える状況も『Happy Feet』に幸いしている。
イライジャ・ウッド以外の、
すべてのキャストたちが、プリンスやEW&F、シナトラなどの名曲を歌っている。
スティービーワンダーの「I Wish」では、
子ども時代のマンブルのかわいらしさが全面に出てるし、
アースウィンド&ファイアーの「Boogie Wonderland」においては、
グローリアの素敵な歌声とペンギンたちのタップが渾然一体となって素晴らしい、
さらには、ロビンウィリアムスが自分で歌っている「My Way」は、かなり聞き応えがある。
どれもこれも、いいですねぇ。

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・Song Of The Heart - Prince
・Hit Me Up - Gia Farrell
・Tell Me Something Good - Pink
・Somebody To Love - Brittany Murphy
・I Wish - Fantasia, Patti and Yolanda
・Jump n' Move - The Brand New Heavies (featuring Jamalski)
・Do It Again - The Beach Boys
・The Joker - Jason Mraz mash-up with "Everything I Own" - Chrissy Hynde
・My Way - Robin Williams
・Kiss - Nicole Kidman mash-up with "Heartbreak Hotel" - Hugh Jackman
・Boogie Wonderland - Brittany Murphy
・Golden Slumbers/The End - k.d. lang
・The Story Of Mumble Happyfeet - John Powell
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『本物』に迫ろうとすると、激しい痛みにも似た苦労という障害が存在するのが常だが、
そこを乗り越えるとしだいに面白さが増してくる。
監督をはじめとして、スタッフ全員がひとつの方向に全力を尽くした結晶であり、
そしてそれが、CG物の作品でも金字塔となった。
大人が鑑賞しても耐えられる、
というか、大人じゃないと分からない部分を暗号のようにひそませている子ども向け作品。
それが映画『Happy Feet』なのだと思う。
また、1950年代頃のハリウッド映画全盛時代の
懐かしのタップやミュージカルの伝統がCGの中で意図せずに蘇ったようにも思う。




