舞台の効果音

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それでもボクはやってない3

今回のテーマは、映画『それでもボクはやってない』

周防正行監督の作品って、
たいてい公開された最初の頃に、
賞賛の声が8割、
かなりきつい批判的な声が2割は出てくるような気がする。
そして1年が過ぎて、なんらかの映画関係の賞を受賞すると、
その批判めいた声がちょっと静まるというパターンがお定まりだ。

その批判の代表的な例として、
「芸術性に乏しい」だとか、「オリジナリティがない」
「誰かがやったことの、ものマネにすぎない」
「一般大衆受けをねらいすぎて、俗っぽい」

特に、今回の『それでもボクはやってない』ならば、
「刑事裁判がどう経過するかのマニュアルにすぎない」
「裁判事件の取り扱い方が一面的である」
「笑いも少なく、娯楽性に欠ける」
などなど…。

この『それでもボクはやってない』も公開から1年の時間が経過して、
大方の傾向としては、高い評価を受けているものの、
その批判的な声は、特にクセのある何人かの映画評論家などに根強く残っているようだ。
関わった役者には、非常に好かれる監督でもあるし、
あまつさえ、『Shall we ダンス?』をきっかけとして、
日本のトップバレーダンサーの草刈民代と結婚もしてしまった。
これも、妬まれる原因のひとつだろうか?
周防正行

さて、まずは周防正行監督とは、いったいどういう人なんだろう?
現在52才の周防監督、監督生活20年以上の経歴のわりには、
その作品があまりにも少ない。
以下にあるように、せいぜい7作品ぐらいなものである。
最近の多作なテレビドラマの演出家やプロデューサーに比較すると、
こんなに少なくて生活していけるのかと思うほどの寡作ぶりだ。
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■ 周防正行監督作品

1984年『変態家族 兄貴の嫁さん』
1987年『マルサの女をマルサする』
1988年『マルサの女をマルサする2』
1989年『ファンシイダンス』
1991年『シコふんじゃった。』
1996年『Shall we ダンス?』
2007年『それでもボクはやってない』


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このラインアップを眺めていると、
なんだかとっても余裕をもって映画作りをしているように思えてしょうがない。
羨ましい限りだ。
それが、ある種の映画関係者にとっては、
時に妬ましく感じる時があるのではないだろうか。



1984年に『変態家族 兄貴の嫁さん』で監督デビューしているわけだが、
タイトルの割には、別に妖しげな映画ではない。
ひたすら大好きな小津安二郎の映画の引用で構成されている映画だったりする。



1987年、1988年には、
敬愛する伊丹十三監督の『マルサの女をマルサする』・『マルサの女2をマルサする』
というメイキングものを作った。
これは、まるで伊丹十三監督の演出のすべてを絞り取るような作品でもあった。



1989年の『ファンシイダンス』では、主演の本木雅弘を坊主頭にさせて、
修行する若い僧侶たちと現代仏教のあり方を描いた。
現代における仏教組織を楽しみながら揶揄しているようでもあり、
また当時、流行始めていたトレンディドラマを
ちょっと皮肉っているような感じもする作品だった。



さらに1991年の『シコふんじゃった。』では、
大学の相撲部を題材にし、ついでに今度は本木雅弘君にはまわし姿にさせた。
地味で脚光の当たらない相撲というスポーツを生き生きとしたものに変質させていた。



1996年の『Shall we ダンス?』では、
これも当時今ひとつ人気がなかった「社交ダンス」にスポットを当てて、
中年サラリーマンの自己実現とでもいうべきものを描いた。
(ちなみにその後、ピーター・チェルソム監督が
2004年にリメイクをしたというのはご存じの通りでもある)



そして、最新作である2007年の『それでもボクはやってない』では、
意外と知られていない日本の刑事裁判の状況を描いた。

さてさて、基本的にそれぞれに共通していることって何だろう?

①周防監督が興味をもった題材のみを撮っていること。
しかもその興味をもつ題材は、やや世間からは、
ある種の偏見もしくはまったく興味を持たれていないものを選んでいる。

②また、『ファンシイダンス』~『それでもボクはやってない』の主人公たちは、
当たり前ながら、すべて周防監督が興味をもったジャンルの中に
やむを得ず踏み込むことになり、
結局、その世界のとことん奥まで探求するはめになること。

③特に顕著なのは、ある程度定まった形式美のある世界、または形骸化された世界を
一度は風刺し、破壊したくなるような衝動がドラマの展開の中に実は流れること
(例えばそれが、仏教・相撲・ダンスそして、刑事裁判であれ、
それぞれ突き詰めていくうちに、
通俗化され澱のようにこびり付いた腐敗や汚れを常に批判する感じがある)
それが「青春」っぽい感じで表現される場合もあれば、
今回のドキュメント風に描かれるという場合もある。

いつも笑顔が絶えなくておちゃめな周防さんなので、
まったくもってその笑顔にだまされそうになる。
『周防正行の「いつもデジカメ撮っています」』という、
彼のブログを読むとふだんの彼の面白さが無意識によく表れている。
http://soreboku.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/2006920_2504.html
でも、この人の本質は、実は武骨な男であり、
よく考え抜いた末、用意周到に物事を進めていくタイプなんだろうと思う。
どこかアナーキーで、何かと戦っている人でもあるような気がする。
それでもボクはやってない1

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■ あらすじ

朝の通勤ラッシュで事件は起きた。
警察の取調室で、
自分の言葉をまったく信用してくれない刑事や警官たちに焦る主人公、金子徹平。

その日、金子徹平は朝から気持ちが落ち着かなかった。
フリーターである金子徹平は、ついに会社の面接試験を受けることにしたのだ。
電車に乗ったものの、履歴書を持ってきたかどうかを確認するために途中下車。
不安は的中、履歴書は忘れてしまっていた、
やむえず、そのまま朝の通勤ラッシュで大混雑する通勤電車に、
駅員に押されながら乗りこんだのだが、スーツの一部がドアに挟まってしまった。
ドアにはさまれたスーツの背中の一部分を抜き取ろうもぞもぞ動いているところを、
隣のOLにじろりとにらまれる。
「すいません」とは言ったけれども、まだスーツは挟まれたまま。
その後しばらくして、
背後から「やめてください!」という小さな叫び声。
徹平が目的の駅で降りると、後を追いかけてきた女子中学生から
「いま痴漢したでしょ!」と身に覚えのない痴漢容疑を掛けられてしまう。
周囲の乗客から取り押さえられて駅員に引き渡され、
「ちょっと話を聞かせて」とそのまま駅の事務室へ。
それでもボクはやってない2

事務室では、駅員から何も聞かれないまま、
駆けつけた警察官に引き渡され、今度はパトカーで警察署へ。
「ぼくは何もやっていない」という訴えもむなしく、
「お前がやった」と決めつける刑事の取り調べに嫌気がさした徹平が、
席を立って帰ろうとしたその瞬間、
刑事から「お前は逮捕されているんだ!私人による現行犯逮捕だ」と手錠を掛けられ、
そのまま留置場に入れられてしまう。
しかし、その時、徹平はまだ日本の裁判制度の恐ろしさには気づくよしもなかった…。

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それでもボクはやってない6

「現実に近づけるために映画を面白くさせる小細工はしなかった」という周防監督。
確かに、
周防映画の中でのお笑い担当である竹中直人の出番もマンションの管理人として、
もたいさん(徹平の母)とのからみで、登場しただけになっているのが象徴的だ。
(『シコふんじゃった。』や『Shall we ダンス?』などでも、
竹中は青木富夫という役名で出演しているのが可笑しい。
ちなみに、この役名は「突貫小僧」の名で小津安二郎作品に
出演した青木富夫からとっているんそうだ。)

20件あまりの刑事裁判を取材し、約200回もの裁判を傍聴した周防さん。
それだけでなく地道な調査活動を数年続けた上での作品だ。
相変わらず、自分が気になった対象に対するのめり込み方は凄い。
「普段の生活の中で、自分が驚き興味を持ったものを皆に伝えたいというのが、
僕の映画作りの発想の原点」と語る周防監督ではある。

今回の作品は、
日本の刑事裁判の現状を痛烈に批判する映画でもある。
痴漢冤罪、
2002年に東京高裁で逆転無罪判決が出された事件をきっかけにして、
監督が自らの手で取材した実在のエピソードを作品中に散りばめている。

事件があった場合の警官の調書の取り方、
留置所での実際、
弁護士との接見でのやりとり、
実際の裁判の様子、
裁判官自体の裁判に対する姿勢、


その取材の仕方の徹底ぶりと、効果的なエピソードの入れ方がさすがに上手い。
そんな累積された取材を元にした表現によって、
日本の刑事裁判の実態を映像化している。
観客としては、その画面の中に何度も、「へぇー、初めて知った」と
思うような内容がちりばめられている。
それがために、
「オリジナリティがない」とか、
「刑事裁判がどう経過するかのマニュアルにすぎない」と言われるのも分かるほど、
その描き方がドキュメンタリー風に淡々としている。

しかし、これは個人的な感想だけれども、
周防さんの最大の特徴は、前述からあるように、
自分の好きな対象をいかに吸収し咀嚼して、表現するかということにある。
その対象を取り上げる部分で、
すでに彼のオリジナリティが発揮されているのだと考えた方がいい。

しかも周防さんが選んだ対象については、
その後になんらかのブームを巻き起こすだけの凄みを持つようになる。
こういうタイプの監督というのは、まずいない。
それだけで、もう大したもんだと思う。
それでもボクはやってない4

取材を極めつくした結果、
「無罪を争う法廷の空気は厳しい」とも、周防監督は言っている。
ほとんど有罪にされていく裁判事例の中で、
無罪を争うことの緊張感と恐ろしさを映画『それでもボクはやってない』は、
的確に私たちに伝えてくる。
観客だけは、主人公の無実を知っている…、
だからこそ、この物語が展開すればするほど、
しだいに司法制度に対しての怒りがこみ上げてくるようにできているわけで。
それもこれもやlっぱり取材の力の賜だ。
したがって、
もうそれだけで充分に「表現することの本来的な目的」を果たしているように思う。
今後、待ち受けている陪審制度とのかねあいもタイムリーだ。



ところで最後に、
妻である草刈民代さんが、
周防監督の日常について語っていたものがある。
興味深いので、ぜひ、読んでほしい。

彼は彼のペースを崩すことがない。
というか、崩せない。
彼は丹念に立てた計画通りに物を進める人なのである。
たまに料理をするときは、材料、手順をメモし、それを見ながら作業を進める。
部屋の整理をするときも、日にちを決め、どの日にどの部分の整理をするか、
まず計画を立てて、イメージをしてから実行する。
捨てるか、捨てないか迷ったものは、確実に捨てようと決められるまで取っておく。
一念発起で突発的に行動する私とは、正反対の性格なのだ。
過去に数回、夫が別の作業をしているときに、
いる物といらない物の判別を強要したら、夫が爆発した。
「そんなこと、いま言われても、わからねー!
」』
面白い。
こういうのは、
普通の夫婦によくありがちな風景。
が、しかし、
よく読むとこれこそまさに映画監督周防正行の思考パターンなんだなぁと思う。
はからずも映画人「周防正行」を端的に表している。

料理でも掃除でも、そして、映画でも、
きっちりと計画を立てて、イメージしながら計画通り進める男。
そうでなければ気が済まない男。
彼は彼のペースを崩すことがない。
というか、崩せない…。

結果的にかなり時間がかかる人なのかもしれない。
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■ キャスト

金子徹平(主人公):加瀬亮   荒川正義(徹平の主任弁護人):役所広司
須藤莉子(弁護人):瀬戸朝香  金子豊子(徹平の母):もたいまさこ
斉藤達雄(親友):山本耕史   青木富夫(徹平のマンションの管理人):竹中直人
大森光明(公判担当裁判官):正名僕蔵  室山省吾(公判担当裁判官):小日向文世
古川俊子(痴漢被害者の女子中学生):柳生みゆ  土井陽子(徹平の元彼女):鈴木蘭々
佐田 満(痴漢冤罪事件の被告人):光石研 広安敏夫(控訴審担当裁判長):大和田伸也
市村美津子(徹平の無実を知る目撃者):唯野未歩子 月田一郎(目撃者):田口浩正
新崎孝三(徹平の公判立会検事):尾美としのり 板谷得治(傍聴人):高橋長英

-----------------------------------------------------------------------------2008/03/01、『それでもボクはやってない』がフジ系列で放映されるので、
もしご覧になっていないか方がいらっしゃったら、すぐに観られますね。
制作は、あの亀山千広さん、またひと儲け。
きっとニヤニヤしてるんだろうなぁ。

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コメント

私、役所広司好きなんですよねー
ここでもいい芝居してるんでしょうか?
しかし、冤罪恐ろしいです。この映画で
日本中のお父さんが震え上がったはずです。
2008/03/01(土) 09:10:02 | URL | zin #-[ 編集]
はじめまして
ご訪問ありがとうございましたm(__)m

シコふんじゃったはなつかしいですね。
それでもボクはやってないは、
今日TVで放送なので楽しみです!

また遊びにきます。
2008/03/01(土) 19:55:47 | URL | なり×なり #HD.maeR2[ 編集]

今日見ました。
面白かったです。
最後に無罪にならないあたり凄いですね。

日本は裁判に掛けられた時点で終わりなのが良くわかります。
2008/03/02(日) 01:00:02 | URL | 虎龍 #-[ 編集]
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